« 村山の今週の逸品 プレ二アムディアマント | TOP | 鈴木の今週のドライヴスポット 「すずめっこ森」 »

佐久間の今週の一冊「残り全部バケーション」

2013年04月15日 日記

今週の一冊は、伊坂幸太郎さんの残り全部バケーションです。

この本は、「溝口」と「岡田」という、犯罪のアウトソーシング的な仕事をしている裏稼業コンビに関わる5つの物語です。

第一章 残り全部バケーション
第二章 タキオン作戦
第三章 検問
第四章 小さな兵隊
第五章 飛べても8分

以上五章による短編小説なのですが、「不思議タキオン作戦」「検問」「小さな兵隊」は、別々の小説誌に掲載されたもの。最後の「飛べても8分」は書き下ろし。いわばバラバラに書いた5つの作品が、なことにすべてつながっているのです。これは伊坂ワールドといっても過言ではありません。
伊坂さんは泥棒や殺し屋とか犯罪に絡む仕事をする人物を主役とした作品が多いのですが、キャラクターはなぜか憎めないといった小説が多い
溝口が岡田に裏稼業の手ほどきをした。この溝口が、何ともいい加減な男で、やることは行き当たりばったり、自分の身が危ないとなれば責任を他人に平気で押し付ける。でも、なぜか憎めない。岡田も溝口にひどい目に会わされるのだけれど、なぜか責める気にならない。「魅力的な登場人物」の筆頭はこの溝口。それに岡田をはじめ、その他にも粒ぞろいです。
裏稼業でコンビを組む岡田と溝口ですが、一話目で二人のコンビは解散してしまう。 岡田が当たり屋のような裏の仕事をするのが嫌になり、仕事を辞めたいと言い出したことが 原因。相棒である溝口は承知するが、裏稼業から足を洗うことがそう簡単に行く筈も
ない。上からの圧力により、結局岡田は溝口の前から姿を消されてしまう。そのことを、ずっと 溝口は後悔し続けることになります。
岡田も溝口も悪いことをする側の人間ですが、どちらもどこか人が好いというか、憎めないキャラクターです。
それだけ溝口と岡田の絆は強かったのです。その証拠に、その後誰とコンビを組んでも、ふとした 瞬間に岡田のことを思い出す。そして、不本意な形で岡田を失ったことをずっと悔やんでいる。
全体的にとても読みやすく、ぐっと本に入ってしまうほど読みやすい本です。印象に残るセリフも挟まれていて、何より最後に溝口と 岡田の関係に意外な結末が用意されていたところが良かったです。
作品を通して、携帯電話やらスマホやら、公衆電話やらデジカメやら、デジタルな機器が結構キーとなって登場して、それぞれの特性が作品の中でしっかりと生かされているのも面白いです。
『自分の人生、残り全部バケーション』
こういう考えって、面白いですね。人生まだ続いていくから、全部バケーションのつもりで生きよう!そんな風に思えたら、これからの人生楽しくなるのではないでしょうか。

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://tax-isozaki.co.jp/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/551

コメントを投稿

(いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。)