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佐久間の今週の一冊

2013年03月05日 日記

今週の一冊は東野圭吾さんの「卒業」です。
卒業を間近に控えた、6人の友人グループ。
加賀は大学最後の剣道大会を前に、沙都子に告白をした。
それぞれに進路を決め、将来に対して別々の道を歩み始めるまでのわずかな期間。
グループ内の祥子が死んだ。
状況は自殺だったが、血をふき取った後があったり、死亡時刻を前後して部屋の電気がついたり、消えたりしているという目撃証言があった。
自殺だとして、友人の自分たちには何かを打ち明けるはずなのだ。
沙都子は真実を求めて、行動を始める。
しかし、何もつかめないうちに再び友人が死ぬ。
犯人はグループの中にいるのか?
同期は何なのか、沙都子とは別に真実を探っていた加賀がたどり着いた結論とは。
大学から社会人への変遷。
それに伴う友情の変容というのが、ものすごく上手に表現されています。
通り過ぎてきたあの時代、ずっと仲良くいるものだと疑わずにいましたが、時の流れ、状況の変化によって大人になっていってしまう。
本作の事件には、友情がキーになっている。
親友とはいっても知らない部分があることは当たり前だと、私は思っているが、本作の登場人物たちは固い友情を一変の染みもないものだと思っているところがすごい。
7人の友情は確かにあったのだと思うが、ひとつも隠し事のない友人関係なんて存在するんだろうか。
「死」というものによって、7人の友情を確かめることになるのが何とも切ないと思う。
ただ、ミステリ小説だからか、人の感情の動きをクローズアップしているわけでもない。
この卒業というタイトルは、偽りの友情から卒業という意味で書かれているのではないかと思った。

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