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「つるかめ助産院」今週の一冊

2013年02月18日 日記

今週の一冊は小川糸さんの「つるかめ助産院」です。

主人公のまりあは、一か月前に突如失踪した夫を探すために南の島に一人でやって来た。
その南の島は昔二人で訪れたハート形の島だった。
夫に失踪され、自暴自棄になっていたまりは、頼れる人もなく、帰る場所もない。
不安と孤独を抱えたまりあが、たまたま出会ったのは、「つるかめ助産院」の、鶴田亀子先生だった。
一日一回しか船が出ないこの島は、天候が悪いと船がすぐ欠航する。
そんなまりあは本州の宿に帰れず途方に暮れていた中の出会いであった。
三日間の足止めだった。
体調の悪そうなまりあは、亀子先生に昼食会に招待される。
やがてまりあは、亀子先生から妊娠を告げられる。
夫小野寺との子であった。
その間、助産院を手伝うこととなったまりあは、島の出産にも立ち会い、助産院の営みに参加したことで、誇らしい気持ちになる。
一旦は、南の島から離れようとしたまりあだったが、
まりあの体調と精神状態を見て、実はずっと心配してくれていた、
先生からの、優しく温かな手紙を受け取り、悩んだ末、スタッフとして働きながら、
島で出産することを決意する。
先生は出会った時からすべてをわかっていたのである。
「つるかめ助産院」を世界一快適な助産院にしようと、日々頑張っている、大らかで太陽のような鶴田亀子先生。
ベトナム人研修生のパクチー嬢、島のベテラン助産婦、エミリー。
ベテラン漁師の長老、「世界一周の旅の途中」だという青年サミー。
個性的なキャラクターとともに、まりあの心も徐々に打ち解けていく。
出生の秘密を抱えていたまりあ。
生まれてすぐありあは孤児院の入り口に置かれてていたのである。
その後安西夫妻に引き取られ、育てられていたが安西夫妻は同じくらいの子を無くしていたことを知る。
その子の誕生日。裕福な家庭だった安西家は、ホテルを貸し切り誕生日パーティを行っていた。
何のための誕生日会なのか、小さい子にはまったく理解ができず、自分の存在意義はなんなのか自問自答する。
そんな時家庭教師の小野寺と出会い、まりあは自分の居場所を見つける。
お互い惹かれあった二人はまりあが18歳の時、かけおちをし安西家を出ていった。
初めて自分を必要としてくれる人に出会ったまりあは、幸せの絶頂であった。
しかし、今は小野寺がいない・・・・
望まれない子どもだったと、自分自身をずっと肯定することが出来ずにいた、まりあだったが、個性豊かな島の人々と、働き、笑い、泣き、暮らしていくうちに、少しずつ、孤独だった過去にも向き合い、自身が母になることを受けとめて行く。
そしてクライマックスのお産では、行方不明だった小野寺が現れる。

出産というのは、命と向き合う行為。
現在病院での出産が当たり前となった現在。
つるかめ助産院では自然に近い形での出産を勧めていた。まさに理想の出産である。
出産は生と死とも隣り合わせ。
それだけに、「出産」を無事乗り越えたら、何とも言えぬ、誇らしい気持ちになるものです。
「赤ちゃん」は、希望や光を感じさせるもの。

宿った命が、母を温かくリラックスできる場所を提供している先生。
人間的なお産ができるつるかめ助産院はまさに理想郷。
命と向き合う大事さを知った本でした。

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