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「歓喜の歌は響くのか」佐久間の今週の一冊

2013年01月14日 日記

今週の一冊は斉藤一九馬さんの「歓喜の歌は響くのか」です。


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例えば場東北の山深い街で、産声をあげた名もないサッカーチームが、わずか3年のうちに晴れの天皇杯の決勝に挑むというシーンは考えられるだろうか?
答えはもちろんノー。
しかし、さかのぼること三十数年前、1975年元日の国立競技場でそんな奇跡が起きようとしていた。
日本サッカー史に輝く伝説のチームを追ったフィクションです。

1975年はJリーグ開幕の二十数年前である。
永大産業の創始者深尾茂。合板業界の有名人でこの方は超ワンマン経営者であった。永大産業は合板業界でトップシェア。
すべてを極めた商売人が、最後にほしがるのは、世間の賞賛と身を飾る熱意・勲章だった。
これは、自分の財力だけではどうにもならない。
叙勲への思いの強さは経済界での自分の地位に大きく関わっている。
いつしかそれを文化でもあるスポーツに求めようとする。一流企業は一流スポーツを抱えている。その時ふと思ったのが、スポーツの世界に「天皇」の名が冠された大会があるということだった。優勝チームに授与される菊の御紋入りの「天皇杯」。
いつしか日本一のスポーツチームのオーナーになってやろう。その思いはいつしか執念となるまでになっていた。
1968年メキシコオリンピックで釜本邦茂や杉山隆一を擁した日本代表は銅メダルを獲得した。
日本サッカーは初期黄金期をを迎えた。人脈の中にいた河野文博を顧問に迎え、たまたまサッカーの話をした所良い感触が得られた。その息子は日立製作所でサッカー部。その息子にサッカー部の監督を依頼したが、断られる。
父親の立場を考え、上智のサッカー部にいる友人の、白井恵三に相談。恵三は河口洋を紹介する。
河口は根っからのサッカー小僧。彼は深尾と「3年で日本リーグに上がれ」という約束をする。
山口県熊毛郡平生町を知る人はほとんどいない。この僻地で河口は3年で日本リーグを目指した。
初めは工場の経験者を集めた、サークル程度だったものが、深尾に直訴しいろいろな手を使いながら、三部二部とリーグをあげていく。
その中で、工場の連中たちを巻き込み。グラウンド設立や応援団結成など進めていく。
すべては深尾の「やったらええやないか」の一言である。
一年目で会社も上昇気流そして全国社会人選手権で優勝し、二部リーグ昇格。
会社では時価発行増資をして、126億という巨額の原資をえる。
だがしかしその年の5月3日に深尾は急性心不全でこの世を去ってしまう。享年64歳。
その後も破竹の勢いで進んでいく。
3年目いよいよ目標に近づく一部リーグに昇格した。
初めは勝てず最下位だったが、当時ありえなかったブラジル人トリオの入団させ、そこから快進撃も結果は9位であった。
そして、その年の天皇杯に挑むのである。台風の目になった永大産業は苦戦しながらも決勝戦に進む。その相手は釜本擁するヤンマー。一進一退の攻防も1対2で敗れてしまう。天皇杯にあと一歩届かなかった。

その2年後の3月1日、河口は永大産業を去った。
深尾亡き永大産業は1947年経営破たんする。
5つの銀行による協調融資団が結成された。合板不況が原因であった。
河口たちは存続運動を行い、そして危ういところで存続が決まった。しかし、それも一過性であった。河口は騒ぎを大きくした張本人としてけん責処分。一旦解散を引っ込めた会社はひそかに巻き返しを狙っていた。古参のサッカー部員に退部を迫り、内部から崩壊させようとしたのである。河口もけん責処分後、まったく畑違いの部署に配属になりサッカー部から足を遠ざかっていた。銀行の管理下にあった会社ではどうすることもできず、とうとう会社を辞めてしまったのである。
サッカーを続けられる就職先を希望した部員は16名。その16名の就職先がすべて決まったのが唯一の救いであった。
しかし消えたのはサッカー部だけではなかった。1978年3月20日永大産業は会社更生法を適用を申請し事実上の倒産。負債額は1800億円。戦後二番目の大型倒産だった。ニュースを知った河口は深尾が永眠する墓地に行った。
河口の青春は終わりを告げた。涙が零れ落ち花を湿らした。
2007年永大産業は再び再上場を果たした。河口は現在山口県平生町でサッカーのコーチを務めている。昔のあの頃と同じように。永大産業サッカー部の奇跡はあとわずかだった。

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