佐久間の今週の一冊
2012年04月10日 日記
今週の一冊は小倉全由さんの「お前ならできる」です。
まずは小倉全由さんを紹介いたします。
小倉 全由
1957年、千葉県に生まれる。日本大学第三高等学校教諭、同校硬式野球部監督。日大三高を経て日本大学に進学。卒業後の81年、関東一高野球部監督に就任。87年春の甲子園大会で準優勝。88年に退任するが92年に復帰。97年より母校・日大三高野球部監督に就任。2001年夏の甲子園大会で優勝、同校を初の夏の大会全国制覇に導く。10年春の大会で準優勝、11年夏の大会で優勝。春夏を通じて甲子園出場通算16回(関東一高・4回、日大三高・12回。2011年現在)を数える名将です。
この本は選手の「やる気」を引き出す人間育成術といっても良い本です。
・愛情と信頼が、チームを作り、人を育てる。
監督と選手という関係だけでなく、教師と生徒という関係においても、先に力を尽くすのは指導者の方であるべきで、そこから
信頼関係が築かれ、選手たちが育っていく。
優勝に導いたのは、技術的なものと違う、別の力が働いていたからです。その力とは、私と選手の間にある強い信頼関係です。
・選手を「やる気」にさせる指導法
「昔はこうだ」「これでうまくいった」では、今の子供には通用しません。「十年ひと昔」という言葉があるように、
昔とは十年以上も前の事です。その時代の教え方を押し付けていては、選手との間にひずみができ、コミュニケーションがうまく
いかなくなって、強いチームを作ることはできません。
大学に進学した卒業生がグラウンドにやってきて、今の大学野球が実践している練習方法などを教えてくれる。それを聞いて
いいと思えば、すぐ取り入れます。名将と呼ばれる小倉さんともなれば、確固たる指導法があると思っていましたが、
全くそれとは正反対でした。
今までの練習方法はこうだったけど、大学はこうだから、これをやってみたらどうろうかと、選手たちに説明して判断を仰ぐ。
すると選手たちはまず嫌がりません。今の子供たちは、新しいことへの好奇心が旺盛で、順応性がある。
その方法が採用する価値があるとすれば、進んで取り入れるそうです。
プライドや実績にとらわれず、柔軟性を持って時代に即した指導法を採り入れているのです。
これは野球だけでなく、いわゆる指導者と言われる人すべてに必要なことではないでしょうか。
・我慢する心と思いやる心
人間、生きていく中で、嫌なことも大変なこともたくさんあります。だから、我慢できないと苦労して自分を生きにくくしてしまいます。
小倉さんは日々、我慢する心、耐え抜く心の強さが大事だと教えていますが、その我慢が一番育つのが、日々の練習です。
だから練習で手抜きは絶対にしません。「我慢しよう」という強い気持ちが間違いなく培われるのです。
30メートルダッシュのトレーニングのときなど5メートル手前ぐらいでスピードを落とす選手がいる。すると、
20本で終わるところを全体責任ということで、また本数を追加する。そうなると選手たちも困るから、みんな力を抜かないで全力で走る。
まだやらされているレベルかもしれませんが、とにかく一生懸命走る。そして、その一生懸命走っている中で、
さらに30メートルの一歩先まで走りたいという意欲が出てくる。それが我慢の原動力になるんです。
試合のメンバーから外れたときに、外れたことを素直に受け入れない子がいます。それは我慢のなさを表しているといえます。
メンバーに選ばれなかったことを親に報告するわけですが、そのとき、親にちゃんと言えないと問題が起きてくる。
親がグラウンドを見ていなかったら、あるいは見ていても自分の子供しか見ていないとしたら、不満を抱いてどうして自分の
息子が試合に出れないのかを、場合によっては学校にねじ込んできて、ひと騒動になりかねません。
だから、子供が親に、ヒットの一本打ったからといってレギュラーになれるほど簡単ではないことを教えなくてはいけない。
自分も一生懸命努力してメンバーに選ばれるようになると伝えなければいけないんです。
それを親の意のままに従ったり、あるいは親のせいにしてしまう。
これは親の教育にも関係してくると思いますが、現実を受け止めることができない子は、我慢しようとしない子に多いんです。
もっとも、我慢できる子ならレギュラーの座も勝ち取ってしまう度量があって、問題は起きないのですが。
高校の三年間というのは、人間的に一番成長する時期です。中学生の何も考えなかったところから高校に入り、野球をやる中で
練習の厳しさなどを知る経験は中学時代にはありません。だから、その三年間で、いかに我慢して成長するかなんです。
親がかわいがり過ぎて、なかなか子供に耐える力を植え付けられない時期だからこそ、我慢する心を育てる。
その我慢する心が子供の意識を変えて成長させます。
・責任を持たせれば人はどんどん成長する
毎年甲子園に出場するような強いチームは、グラウンドでの選手たちのコミュニケーションが非常によくとれています。
下級生選手が上級生選手に気兼ねして、なかなか声をかけることができず、そのコミュニケーションの欠如がミスにつながって
試合に負けてしまう。だから、選手同士が遠慮なく声を掛け合うことが大切です。
例えばピンチを迎えても、監督がベンチから「ここは気を付けていこう」などと注意するのではなく、グラウンドの選手の間から
自然とそういう言葉が出てこなくてはいけません。ストライクが入らなくなったら、マウンドに行ってピッチャーに言葉をかけ、
リラックスさせる。そいうやりとりが自由にできる選手関係が大事なんです。
試合になったら上級生、下級生の関係ではなくチームの一人、ポジションを任されている一人としてプレーする。
その責任感がお互いに声を掛け合ったり、言葉を返したりするやり取りになって表れる。
先輩後輩を超えたコミュニケーションの有無が、まとまりのある強いチームになるかどうかの一つの翁条件です。
私自身も高校野球を三年間やってきましたが、この三年間は人生において大きな財産となっています。
野球は技術だけではなく、精神的な部分がとても大きいスポーツです。小倉さんは選手を信頼し、時には厳しく時には優しく接しるのが
よくわかりました。時代は変われど、子供たちは基本的に変わらない。時代に合った指導法は、ビジネスにおいても非常に参考に
なりました。