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佐久間の今週の一冊

2011年11月07日 日記

今週の一冊は、中村計さんの「甲子園が割れた日」です。

いつものように本を探していると、ふと目に留まったのが現大リーグアスレチックスに所属する松井秀喜選手の

高校時代(星稜高校)のユニフォームではありませんか。

高校野球マニアの私は迷わず手に取りました(笑)

今や知らない人がいないといっても過言ではないプロ野球選手。「松井秀喜」

1992年8月16日夏の甲子園。

高校野球史上今なお「事件」として記憶される、明徳義塾対星稜の一戦でおきた「松井5打席連続敬遠」

走者がいない状況でも松井選手は勝負をしてもらえません。

試合後松井選手は「相手のやり方なんで仕方ない・・・」

と大人の対応だったのを覚えています。

私はこのころ中学生で、この試合をリアルタイムにテレビで観ていました。

「えっ。なんで勝負しないの??」

みなさんこんな気持ちだったのではないでしょうか?

それに腹を立てた星稜高校の応援団席からメガホンが投げ込まれる・・・・

甲子園は異様な光景でした・・・・今までこんな甲子園は見たことがない・・・

試合は明徳義塾が勝利し、松井の最後の夏は終わりました。

試合後の校歌では「帰れ」「帰れ」のコールが校歌を飲み込んでいました。

高校野球ってこんなにすごいものなのか・・・

甲子園にあこがれていた私にとってこの試合は今でも心に残っている試合です。

この5敬遠は当時、勝利至上主義に毒されている。明徳義塾の馬淵史郎監督をこうバッシングし、

高校野球は正々堂々真摯に行うものだといった形に定められていたのかもしれない。

この試合後、スポーツ紙など各新聞がこの記事を書きたてました。

当時の高野連会長だった牧野直隆さんが異例ともいえる談話を発表しました。

「走者がいるとき、作戦として敬遠をすることはあるが、無走者のときには正面から勝負をしてほしかった。

一年間この日のためにお互い苦しい練習をしてきのだからその力を思い切りぶつけ合うのが、

高校野球ではないか」

この談話を非難する人は少なくなく、ルールを犯したわけでもないチームを、会長の立場にある人間

が発するのは軽率極まりない、と。

この「お上」の声が、その後の世論を作ったといっても過言ではないと思います。

星稜戦の6日後・・・3回戦に進んだ明徳義塾は広島工業に0対8で敗れています。

試合前、広島工業の応援席では父母の会によってこんなビラが約1000枚配られていました。

「明徳義塾高校はルール違反をしたわけでなく、選手に何の罪もありません。

わが広島工業野球部も同じ作戦を採用したかもわかりません」(一部抜粋)

火を置くごとに、明徳同情論が広まりつつありました。警備を強化するなどの厳戒態勢の中で迎えた一戦だったが、

そんなこともあり、この日明徳に対するヤジなどはほとんど聞かれなかったそうです。

油断でもなく、ヤジでもなく、温かさ。ヒール役を覚悟していた明徳の敵は思わぬところに潜んでいました。

「これまでの人生であれだけの感動をしたことはない」

と主将だった筒井さんはしみじみと語りました。

広島工業戦後、宿舎の食堂で開かれた最後のミーティングのことでした。

「あの気丈馬淵監督が、二言、三言しゃべっただけで言葉にならなくなった。もう号泣でしたね。

あの瞬間、このチームでよかった。悔いはない、って思えましたね。あの人が泣く姿初めてみましたから」

馬淵監督のこの涙を記憶していない選手はいませんでした。

「お前らはようやった・・というのは聞き取れましたが、あとはみんなして、ひたすら泣いていました。」

馬淵監督が涙の真相を語っています。

「広島工業に負けたからじゃない。なんで悪いこと何もしていないのに俺らがこんなにボロクソに言われて、

非難されてね。どうしてなんだろう・・・そういう思いが強かった。おまえら、野球したことあんのかって言いたかった。」

実は馬淵監督は、関係者の説得で思いとどまったが、星稜戦の後、監督を辞し高知に変えるつもりでいたのだ。

「やってられるか!」そんな思いだった。

泣いたのは、この時と日本一になった時の2回だけだったそうです。

馬淵監督は明徳という勝利を義務付けられた高校の監督だったから、あのような非常な作戦を用いたのではない。

この人の本質とも言うべき負けじ魂に忠実だったからこそ、あの作戦を選択したのです。

「観る側が過度に美化され実像とかけ離れつつある「高校野球」というイメージに毒されていたのではないだろうか。」

「無菌であること、真白であることよりも、語弊があるかもしれないが、多少菌にまみれていること、多少汚れて

いることの方がピュアだし、健全だ。」

「野球を教育の一環として観るなんて。そんな無粋なことはしたくない。野球は野球であるだけで、十分に素晴らしい。」

と筆者の中村計さんは書いています。

競技スポーツは真っ白なんてありえません。一見きれいなものでも、よく見ると多少汚れていたり、汚れがうっすら

ついていたりもしますよね。これもスポーツ。

もし当時自分が監督だったらそんなことができただろうかと、ふと考えました。

馬淵監督のように腹を据え自分の信念を通し、選手を信じれたでしょうか?

私にはたぶんできなかったと思います。

この5打席連続敬遠は今後も高校球史に残る試合に間違いありません。

その中に合ったドラマがこの本には書いてあります。

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