今週の一冊「コンビニララバイ」
2013年09月25日 日記
今週の一冊は池永陽さんの「コンビニララバイ」です。
舞台は、コンビニ「ミユキマート」このコンビニはとても変わっている。
なぜなら、オーナーの幹郎にまったくやる気がない。
万引きを見つけても捕まえることはしないし、ホームレスにとても優しいし。
従業員の治子に「深夜営業をやりましょう」「ファストフードを置きましょう」と言われても生返事でまったくやる気がない。
これでは潰れるのも時間の問題。
幹郎にやる気がないのは理由がある。息子がひき逃げをされ、失意の妻を力づけるために会社を退職して始めたコンビニ。
その妻も車にはねられてしまい、彼にはこれから全く希望というものがないからである。
この基本設定で、全七話が書かれている短編小説です。
ここに登場する人物たちも不器用な人間ばかり、治子に惚れながらも死に赴く八坂。幼い記憶に縛られている香。
主人公の幹郎も、もっと楽に生きる方法もあるのに、ここに登場する人物たちはその道を選ばずに人生を歩んでいる。
人を愛すること、体が欲情することは、けっして理屈ではないということ、そして生きていくことは恥をかくことでも
ある、ということを本書はあらためて教えてくれる。
コンビニという現代にかかせない舞台。深夜営業もしていない、ファストフードもない今時珍しいコンビニ。
人間味あふれる舞台だからこそ、様々な事情を持った人たちが集まっている。