今週の一冊「かばん屋の相続」
2013年09月03日 日記
今週の一冊は池井戸潤さんの「かばん屋の相続」です。
この本は6編による短編小説。そこに出てくる人物がすべて銀行員といったないようです。
いくつかある中でも、個人的に面白かったものをご紹介させて頂きます。
「かばん屋の相続」
父が経営するかばん屋が嫌で、銀行に就職した長男。
次男はそれに伴い、父を支えかばん屋を手伝っていた。
ある時、父が急死してしまう。肺ガンだった。
その後遺言状の存在が明らかになった。その遺言の内容は会社の全権を長男に譲るといった内容だった。
事前に全く他の人には相談がなかったという。
もしかして、遺言は偽造されたものなのではないか?という疑いも出たほどであった。
専務であった次男が継ぐべきなのに・・・
長男は手のひらを返したように銀行を辞め、かばん屋を継いだ。
昔から気の荒かった長男は、大手銀行に勤めていたせいもあり、取引先の弱小銀行を見下す高慢な態度をとっていた。
大手銀行に勤めていたプライドが捨てきれなかったのだ。
銀行時代から、中小企業を馬鹿にするような発言が多くあった長男。
会社を守ってきた次男は到底納得できるはずもなく、職人を引き連れて新しい会社を設立する。
はたして父の真意は何だったのだろうか?
実はこの会社は、ほぼ倒産寸前の会社だった。生前父は次男に職人をつれ別会社を作れと言われていた。
取引き先の連帯保証人となっていたこの会社は取引先の倒産により連鎖倒産。競売となってしまった。
ここにきて、高慢な態度を治しても時はすでに遅かった。
弱小銀行にまで、融資を断られてしまうぐらいだった。
亡くなった、職人の父は長男を許すことはなかったのである。
相続問題でもめている家族間・会社などは様々あるが、こういった形で会社が倒産するといったのはとても皮肉でした。