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今週の一冊「重力ピエロ」

2013年08月19日 日記

今週の一冊は伊坂幸太郎さんの「重力ピエロ」です。

半分しか血のつながりがない「私」と、弟の「春」。春は、私の母親がレイプされたときに身ごもった子である。ある日、出生前診断などの遺伝子技術を扱う私の勤め先が、何者かに放火される。町のあちこちに描かれた落書き消しを専門に請け負っている春は、現場近くに、スプレーによるグラフィティーアートが残されていることに気づく。連続放火事件と謎の落書き、レイプという憎むべき犯罪を肯定しなければ、自分が存在しない、という矛盾を抱えた春の危うさは、やがて交錯する。

伊坂流「罪と罰」ともいえる本書は、背後に重いテーマをはらみながらも、一貫して前向きで、明るい。そこには、空中ブランコを飛ぶピエロが、一瞬だけ重力を忘れることができるように、いかに困難なことであっても必ず飛び越えることができる、という著者の信念が感じられる。とくに、癌(がん)に冒されながらも、最後まで春を我が子として支援する父親の存在が、力強い。春が選んだ結末には賛否両論があるに違いないが、「本当に深刻なことは陽気に伝えるべきなんだよ」と春に語らせた著者のもくろみが成功していることは、すがすがしい読後感が証明している

人は育った環境、周りの人々によって影響され育って行くものだと思う。遺伝子としての、繋がりなんてその人を見るのに何の役にもたたないのではない。人間は色々なことが容易に分かるようになった反面知らなくてもよいことを知り余計な苦しみも増やしているのかも知れません。それにしてもこの家族仲良いし最強の家族だと思う。そんな家族はなかなかお目にかかれるものではない。お父さんを選んだお母さんも本質を見抜ける人だったのではないでしょうか。

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