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今週の一冊「グラウンドの空」

2013年10月23日 日記

今週の一冊はあさのあつこさんの「グラウンドの空」です。

この小説はいきなり結末からスタートする。

野球の大会に挑んだ中学生の大会の最後の試合が書かれてスタートしています。

この本の中で野球の様子が書かれているのはここだけ。

主人公、山城瑞希が通う八頭東中学校は県境にあり、人口が減り続けている地域。

瑞希はキャッチャーを努めているが、人口が少ないせいもあってか良い選手は集まらない。

現在この野球部は、野球で一番大事なエースピッチャーがいないのである。

そこに転校してきたのが、作楽透哉。透哉は大地主の孫だが、どうやらわけありの様子で転校してきたのに一切学校には顔を見せない。

人を怖がって学校に来ないのだという。

同じ野球部員の親友、田上良治が作ったきっかけで、二人は透哉はすごいボールを投げるピッチャーということを知る。

早速野球部に勧誘をするが、もちろん断られてしまう。「野球しようぜ」この言葉はあまりにも直球すぎて透哉に受け止められなかった。

しかし、二人はこれに動じなかった。どうしたら彼がグラウンドに来てくれるか試行錯誤する。

「野球しようぜ」「キャッチボールしょうぜ」この言葉は本の中によく出てくる。

だが、この二つの言葉はうまく使い分けられていた。

相手のことをよく知らずに、ただ一方的にボールを投げていては相手に伝わらない。

思いを伝え、受け止めなければ伝わらないことがわかったのだった。

透哉は地元神奈川のチームで野球をやっていた時に、有名なピッチャーだった。

その時の親友から野球を勧められ、野球を始めた。内気な性格を変えてくれたのは野球だった。

しかし、あまりにも才能に恵まれ過ぎてしまった透哉。周りからの嫉妬などから徐々に野球から距離を置くようになり、周りのいじめから友達の財布を盗んだという濡れ衣を着せられてしまう。

それから、人を信じれなくなった透哉は引きこもり、学校へ行かなくなってしまったのだった。

その姿に耐えられなくなった透哉の母は祖母の家に転校を勧める結果となった。

また野球を始めるきっかけとなった言葉「野球しようぜ」は、お前の過去も全て受け止めた上で純粋に野球を一緒にやりたいという思いが伝わったからだったのだと思う。

田舎に住む純粋な少年たち。初めは自分たちのことしか考えていなかったであろう。

それだけでは伝わらないと気づいた少年たちは、正面からぶつかり合い分かりあった。

その結果、透哉というエースピッチャーを見つけたチームは優勝する。

透哉の全力で投げるボールを受け取ることができたのである。

少年たちの純粋な気持ちが書かれている本でした。


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